医療業界ニッチビジネスからの成長:医療関連機器
ライオンパワーが産業界から医療業界へ進出し始めたのは、ちょうど2000年あたり。医療業界ニッチを狙っての参入でした。
医療業界の壁は思いのほか高く加速できずにいますが、これが医療業界に中小企業が新規参入する最短コースであると確信しています。
ライオンパワーでは、医療業界の端かもしれませんが既に効率化商品を出すことに成功。現在も検査装置、予防医学商品の開発を進めています。
弊社のやる気に対し、アイディアをご提供いただく
製品ラインナップにも既に同じ機能を有するものはあったのですが、非常に大規模なもので、大型の検査センター向けの装置。中規模、小規模施設への提案ではオーバースペックになってしまい、ビジネスに繋がっていないとのことでした。
『小型で、施設ごとに処理能力を追加できる装置』というアイデアを打診されたのです。
成功に繋がった最大ポイントは、お客様との関係構築
S社の製品開発を弊社がどうしてできたかたいうと、弊社の技術者が半年間派遣されており、先方の開発の手伝いをしていた関係で、色々な開発基準を勉強することができたから。自社開発と言っても、お客様の開発基準で出来る強みがあったのです。
ただ一方で、医療業界独特の仕様、完成度、サービスには苦労させられました。
これまでは産業界を相手にした開発商品がほとんどだったので、ユーザーとしては機械や装置の扱いに慣れている人ばかり想定していれば大丈夫でした。
しかし、医療業界ではそのような方はまずいません。「可能な限りシンプルな操作(例えば i-Phoneのようにボタンは1つ)」「故障が無いこと」などが求められたのです。
仕様詰めに色々試行錯誤しながら、先方にもアドバイスを頂き進めていきました。
完成度として求められたのは、「採血管の搬送スピード」「採血管に巻かれているバーコードシールの読み取り」「ホストコンピュータとの通信」「イレギュラー時の対応」などでした。
今思えば、このお客様との関係構築がポイントでした。
私たちは、外観デザインにも力を入れていたのですが、その時も「シンプルに安く」と指示を受けました。医療機器業界はデザインを凝ることも多々あるのですが、反対にまったく凝らない部分もあり、その感性はやはり業界の人に聞くのが一番でした。
製品開発を終え販売の時期になると、全国に散らばる営業スタッフが本社に一同に会する日に装置を持ち込み、帰り際にみてもらえるようにアピール。この作戦もアドバイスによるものでした。
医療の見えない壁は、お客様の誘導で突破
1号機は沖縄の琉球大学病院に納入。この頃から、お客様の営業統括部門との関係が構築されてきて、お客様の困りごとを色々お聞かせいただけるようになってきました。
その情報から開発したのが、遠心塗抹装置「とまつくん」です。
この装置は、昔O社が製造していたのですが、市場が小さく撤退。その後S社が引き継いだのですが、やはり市場規模が小さいために撤退となっていたものでした。
「後継機種が無いため、現場では修理しながら対応している」とのこと。この情報を教えてもらったその場で弊社での開発と販売していただくことを交渉。すぐに可能なだけの情報を持ち帰り早速開発に入ったのです。
某大学の有名教授には装置の貸し出しモニタリングの許可を頂き、手厳しい指導を受けることができたのですが、これも弊社だけではできなかったことの一つ。おかげ様で市場クレームはない状況まで、製品の完成度を上げることができました。
市場に出して一番多く聞かれたのが「助かった~」という言葉。現場ではそれほど後継機種が無く困っていたのです。
装置の清掃に非常に手間がかかるという従来装置の問題も「とまつくん」ならワンタッチ。血液が飛散するユニットごと取り外せるようにしたため、ユーザーからは「簡単に掃除出来ていいね~」という評価をいただいています。
とまつくんは、現在月2台ペースで販売されていますが、カラーリングオプションを増やしたりしています。
お陰様で臨床関係の展示会では少し存在感が出てきた感じで、問い合わせも増えています。現在は、とまつくんの周辺装置として、染色装置も販売しています。
思ってもみないトラブルに四苦八苦
これら医療機器開発の活動は取引先の島津製作所様(京都市)にも伝わっており、島津SD社(当時)という島津グループの関連会社から、病院再来受付機の開発打診がありました。もちろん、一発OKを出しましたが、これも波乱の幕開けでした。
このシステムは、よくショッピングセンターのレストランエリアなどで採用されている、料理ができたら端末のブザーがなってお知らせするシステムの、病院バージョンです。
患者がタッチパネルで予約状況などを入力し、患者情報が記憶された端末(携帯電話みたいな物)を本人が受け取って、それを持って病院敷地内で待つというものです。
患者は、遊具エリアやカフェ、図書館など院内のどこででも待つことができ、これまでのように診察室の前で長時間待つ苦痛から開放されます。ほとんどの患者に好評なシステムで、今では全国に展開しています。
Fujitsu製「NAVIT」
しかし、患者には色々な状況があり、年齢も子供からお年寄りまで様々。1号機では弊社が想定していた予想外の操作が多発しました。
患者が受付で操作したあと装置から端末が出てきます。普通はこれを取り出し携帯してもらうのですが、ある方は思いっきり装置に押し込んで戻そうとされました。もちろん装置は故障。修理出張となりしました。
その他、車椅子の方では端末を受け取りにくいとか、車椅子の足元が装置にぶつからないよう強度のある鏡を取り付けたりと、未経験のことが様々おきました。
ある時は、深夜バスで東京まで行って朝に部品を届け、その日の夜の深夜バスで帰ってきたりもしました。
しかし、回を重ねることに次第に問題もなくなり、現在ではPanasonic電子カルテ用とFujitsu電子カルテ用の2ラインナップを用意して販売できるまでになっています。