ライオンパワー株式会社

製品開発ストーリー:困難=差別化への源流。私たちは、イノベーション装置の開発で「いいねぇ」をGETしていきます。

ミカン箱が救った中古エンジン業界:Σe-Star

中古エンジンの輸出業者を救ったディーゼルエンジンスターター装置。

日本のディーゼルエンジンは、地球環境にも優しく、低燃費、高品質であり、中古エンジン業界でもJAPAN ブランドが確立されています。

JAPANブランドを世界に広げたミカン箱「Σe-Star」物語です。


技術の進歩が中古解体業者の経営を圧迫

環境問題が取り上げられるようになって、既に20年以上。日本の排ガス規制もその頃から徐々に厳しくなり、規制を通りにくい中古車や中古エンジンは海外へ輸出されるようになっていきました。
ディーゼルエンジンは燃費が良く、加えて評判が良い日本車のエンジンという事もあり、東南アジアをはじめとする国々で高い需要があります。

厳しい排ガス規制と環境にやさしいというイメージの販売戦略の元、改良が急ピッチで行われてきた日本のディーゼルエンジン。エンジン制御は、これまでの機械的制御からコンピュータを使った制御と変化を遂げていきました。

その結果、中古解体業者で新たな問題が発生したのです。

これまでは、車から取り出したエンジンはそのまま何の問題もなく販売できたのですが、コンピュータ制御方式になったことで、取り出したエンジン単体では動作しなくなり、動作するエンジンかどうか判断できなくなりました。
その結果、中古ディーゼルエンジンは売れなくなってしまったのです。

「ならエンジンと一緒にコンピュータもセットで取りだせば良いのではないか?」となりそうですが、解体される車はどこかにダメージを受けており、コンピュータも故障しているものなのです。

動く保証がないエンジンは、これまでの販売価格から1/6の価格へと落ち込み、経営も成り立たなくなっていきました。


誰もが避けた案件、ライオンパワーには確信があった

石川県工業試験場

そこで、業界団体から日本各地の工業試験場に対し、取りだされたエンジンを動かせるテスト装置開発が打診されたのです。

この打診に対し、どの地域からも色好い返事はなかったようで、ライオンパワーの地元石川県の工業試験場も一旦は「難しい」と回答したようです。ただその後、ある方が「ライオンパワーに聞いてみたらどうか?」と言ってくれたそうで、弊社にも石川県工業試験場から連絡が入りました。

当時の社長(現会長)は「ディーゼルエンジンがかからないなんてありえない」と軽く即答したようですが、あまりにも軽い返答に、先方は最初のうち真剣に受けとめてくれなかったようです。

現会長が即答できたのは、車が大好きで大学時代にエンジンの研究をしていたこと、特に卒論はディーゼルエンジンを題材にしたらしく、その構造にも精通していたというベースがあったからでした。

1号機の制御基板1号機の制御基板

「コンピュータ制御といえども、燃料(軽油)の噴射量と圧縮、そして爆発を制御できれば、どんなディーゼルエンジンでもかけられる」と説明し、このテスト装置の開発に取り掛かることになりました。

問題は、日本の各メーカーからの情報提供が全くなかったこと。技術秘密主義と、中古エンジンを使われるより買い替えを希望する販売側の論理、ある意味当然の結果でした。
ライオンパワーでは自動車メーカーの技術を追い求めることはせず、自然爆発原理のディーゼルエンジン理論にあわせたオリジナル制御(マイコン制御)を開発していきました。


ミカン箱で臨んだ記者会見

開発が求められていたテスト装置は、全てのディーゼルエンジンに対応し、テスト運転できなければならなかったのですが、一口にディーゼルエンジンと言っても様々で、各エンジンごとに制御方式が微妙に違っているという問題がありました。

全てのディーゼルエンジンを現物調査全てのディーゼルエンジンを現物調査

これについては、全てのディーゼルエンジンを用意して頂き、現物調査を通してプログラムの変更を行いました。

初めてエンジン始動が可能となった時、共同開発していた石川県工業試験場、中古解体業者の奥野自動車さんとともに、記者会見を開くことになりました。
しかし、出来たての制御基板は裸の状態。このままでは“格好悪い”ということで、ミカン箱に入れて記者会見に臨みました。今となってはどちらが格好悪かったのかはわかりませんが(笑)。
記者発表は無事成功、NHKなどの後日取材もあるほどの注目ぶりでした。

装置は、“気筒数や馬力数、大きさ、搭載する車種、車両メーカ等に関係なく、1台で全ての種類のディーゼルエンジンを始動確認できる”という意味を込めて、数学の積分記号「Σ」と“復活祭”の「イースター」を合わせ、「Σe-Star」と名づけられました。

その後、Σe-Starのお披露目を兼ねて地元の展示会でエンジン始動を実演していたのですが、消音マフラーもついていないむき出しのディーゼルエンジンが始動すると、とてつもない爆音が会場に広がり、また排気ガスももの凄く、「音がうるさい」「空気が汚れる」ということで、たった2回で開場から実演禁止を言い渡されてしまいました!(笑)

この装置の開発では、経済産業省の補助金を受けることが出来たのですが、販売する装置にするための開発には3年を要したので、最終的にはかなりの開発費が投入されました。

現在、国内の主要中古解体業者にはΣe-Starが導入され、中古ディーゼルエンジンの海外への輸出に貢献していますし、何よりも地球の環境保護に貢献できているものと思われます。


Σe-StarからJamana-eへ、そして高機能Σe-Starへ

Σe-Starはその後、全てのディーゼルエンジンの動作テストができるΣe-Starから、単体機種のディーゼルエンジンのみに対応した専用のエンジンコントローラへと開発は進んでいきました。
お客様がエンジンを単体で購入し車に載せ替えるとき、エンジン各所からの配線を車のコンピュータにつなげて動くようにするという手間が発生するのですが、この手間を省くためのコントローラ『エンジンとコントローラ(マイコン制御装置)のセット製品』の開発です。

これは、Σe-Starから不必要な回路やソフトを抜き取るだけなので、開発には大きな問題は何もありませんでした。
商品名も「Jamana-e」(ジャマナーイー)。これは、金沢弁の「何の問題もない」→「じゃまない」をもじったものです。

Jamana-eは、車検が厳しい国での採用は難しく費用もアップしてしまいますが、比較的車検が厳しくない国では日本の壊れにくいエンジンの人気は高く、Jamana-eも売れているようです。

ディーゼルエンジンの再利用について市場調査を行ったとき、アメリカにはΣe-Starを拡張し、トルク測定もできる装置が既にあることがわかりました。この装置は大きく、しかも高額商品。導入先も一握りのようでした。
ただこの装置で特徴的なのが、エンジンを再運転するテストだけでなく、エンジンについての様々な指標データを出力できるようになっていることでした。
これを証明書のようなものとしてエンジンに添付することで中古エンジンの商品価値を上げ、収益力につなげていたのです。

これにならって、エンジンのデータを出力できるようなΣe-Starを現在開発中で、2016年春には販売できると思います。

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